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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
Read 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,678 characters · 394 screens
※(ローマ数字7、1-13-27)
それは蟻の塔で白蟻の糞であったが、広栄は神聖視しているのであった。
※(ローマ数字7、1-13-27)
街路一つ距てて母屋と向きあった肆は、四間室口で硝子戸が入り、酒味噌酢類を商うかたわらで、海苔の問屋もやっていた。それはもう三時近かった。肆には二三人の客があった。
そのとき広巳はのそりと入って来た。その広巳の眉の濃い浅黒い顔は土色に沈んでいた。広巳は肆の者には眼もやらないで、肆の左側の通りぬけになった土室を通って往った。そこに腰高障子が入っていて、その敷居を跨ぐと庖厨であった。そこは行詰に釜のかかった竃があり流槽があって、右側に板縁つきの室があったが、その縁側は肆の者が朝夕腰をかけて食事をする処であった。
「お帰んなさい」
乾からびたような声ではあるが、懐しみのある声であった。胡麻塩の髪の毛を小さな髷に結った老婆が、室の中で半纏のような物を縫っていた。それは定七の女房のお町であった。定七夫婦はそこに起臥していた。広巳はぼんやりお町を見た。
「うん」
「どこへ往ってらしたのです」
「うん」
「ほんとにどこにいらしたのです、皆さんが心配してらっしゃるのよ、ほんとにどこにいらしたのです」