Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

にっき

日記

宮本 百合子

Read 日記 (にっき) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 65,193 characters · 131 screens

Aozora Bunko

想像でなく、理想が其処にあると云った方が正しい。

◎

夜、七時半から、楽しみに待って居たクライスラーを聴きに行く。実によい。ぼんやり印象に遺って居る、ジムバリスト、パアローと段々比較して見ると、潜精力の大きさと、情感の自由な点で、一番であるように感じた。ジムバリストの音は確かさ、厳かさ、理知の均整と云うような心持で人を打つ。襟を正さしめた。けれども、クライスラーには、人間らしい胸の鼓動が深く音の底に流れ、聴く者をとらえて、音波の裡に没入させる。ステージに立った彼のヴァイオリンや弓は、更に軽らかな小さいものに見え、ボーイングが自在なので、「弾いて居る」重苦しさなどはなく、麗しい、豊かな、変転極りない音が、雲のように湧き立って来る。

あのデリケートな、純粋な、最高音を、何と言葉で云ってよいのか。力強く掻きならされるあの三重音の偉力! 腕の力、筋肉的な力などと云うものが、不思議に霊化されて居る云い難い優美さがあるではないか。

エルマンの、いかにも彼の金毛の生えた丸い指で抑えるらしい音の現実的さ。パーローの、神経質な細い指が緊張し必死になって絃を走る音、皆違う。