Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Read 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) by 横光 利一 (よこみつりいち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 86,787 characters · 177 screens
数人の若者からなる楽人は、槽や土器を叩きつつ二絃の琴に調子を打った。
肥え太った奴国の宮の君長は、童男と三人の宿禰とを従えて櫓の下で、痩せ細った王子の長羅と並んでいた。長羅は過ぎた狩猟の日、行衛不明となって奴国の宮を騒がせた。彼は十数日の間深い山々を廻っていた。そうして、彼は不弥へ出た。かつてあの不弥の宮で生命を断たれようとした若者は彼であった。
「長羅よ、見よ、奴国の女は美しい。」と君長はいって踊る婦女たちを指差した。「我は爾に妻を与えよう。爾は爾の好む女を捜せ。」
長羅の父の君長は、妃を失って以来、饗宴を催すことが最大の慰藉であった。何ぜなら、それは彼の面前で踊る婦女たちの間から、彼は彼の欲する淫蕩な一夜の肉体を選択するに自由であったから。そうして、彼は、回を重ねるに従って常に一夜の肉体を捜し得た。今また彼は、櫓の下から二人の婦女に眼をつけた。
「見よ、長羅、彼方の女の踊りは美事であろう。」
長羅の細まった憂鬱な眼は、踊りを外れて森の方を眺めていた。君長は空虚の酒盃を持ったまま、忙しそうに踊りの中へ眼を走らせながら、再び一人の婦人を指差していった。