Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens

Aozora Bunko

海水が高いと案じ油断はしていなかったが、うとうと眠った夜中にチョロチョロと耳近く水の音をきいた。戸外の暴風雨にはまぎれぬ音なのですぐに目が覚めた。潮入りの池は島中でたったひとつだから、これは池があふれたな、近所に気の毒だとその瞬間に思ったが、よく目を覚すとそれどころではなかった。何もかもが浮出して器物が活動している。ボンヤリしているのは人間だけだった。

電燈は断れた。幸に満月の夜ごろだから、月はなくても空は真暗というほどではない。

離家から、二階にいた中学生の弟が裸で、胸まで水に浸って、探険用の燈火をつけてやってきた。二匹の犬がザブザブ泳いで後について来た。

「老爺さんをともかく二階へあげておくれ。」

というと弟が答えた。

「とても駄目だよ、おやっちゃんでも言わなければ動きゃしない。なんてったって、戸棚の前に座って、硫黄をいじくってる。」

「でも水で大変だろう。」

「うん、床が高いけれど、座ってる胸のところへ来ている。」

「硫黄をみんな二階へあげてあげるといっておくれ。」

「こっちへ連れて来たいが、老人だから流されるだろう、とても甚いや、僕でもあぶない。」

私は突嗟に富士登山の杖が浮いてるのをとって、窓の外の弟にわたした。