Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens
そういわれても怒らずに、おかみさんは、糊を煮ていた。お天気のよい日、朝の間に、御不浄の窓から覗くと、襟の後に手拭を畳んであててはいるが、別段たぼの油が着物の襟を汚すことはなさそうなほど、丸くした背中まで抜き衣紋にして、背中の弘法さまのお灸あとや、肩のあんま膏を見せて、たすきがけでお釜の中のしめ糊を掻き廻していた。※とした看板がかけてあって、夏の午前は洗濯ものの糊つけで、よく売れるので忙しがっていた。平日でも細い板切れへ竹づッぽのガンクビをつけたのをもって、お店から小僧さんが沢山買いに来た。
コレラは門並といってよいほど荒したので、葛湯だの蕎麦がきだの、すいとんだの、煮そうめんだの、熱いものばかり食べさせられた。病人の出た家の厠は破して莚をさげ、門口へはずっと縄を張って巡査が立番をした。
深川芸妓だったおたけさんもコレラで死んだ。背の高い、反り身な、色の白い、額の広い女で祖母の姪だけに何処かよく似ていた。辻車に乗って来て、気分がわるいと言った。それなら早く帰る方がよいだろうと、その車で出たが、車屋がすぐ引返してきて、お客様が変だとおろした。
門から這入って、庭を通って来て、渡り縁に腰をかけたが、今出ていった時とは、すっかり相恰が変って、額を紫っぽく黄色く、眼はボクンと落ちくぼみ、力なく見開いている。