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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens
下の級は、寿とか、福とか、むずかしくなると、三字、五字、七字――南山寿とか、百尺竿頭更一歩進とかいうのだった。
課業はすっかりやめてしまって、その手習にばかりかかる。そしてお墨すりだ。
――あたしのは丸八の柏墨だ。
――あたしのは高木のいろは墨だ。
――だめだ、いろは墨は、弘法様のでなくっちゃいけない。
そんな事を各自に言って墨を摺る。短かくなると竹の墨ばさみにはさんでグングンと摺る。それを大きな鉢に溜めてゆくと、上級の子がまたそれを濃く摺り直す。
――こうやると好い香になる。と梅の花を入れる子もあった。早く濃くなるようにと、墨をつけて柔らかくしておくものもあった。
――ばりこになるよ。とそれを嫌がるものもある。
商家の町なので年の暮はなんとなく景気がよい。学校へも、お砂糖の折だの、みかんの箱だの炭俵だの、供餅だのが沢山もちこまれる。お席書がすめばその日から休みで、かえりには蜜柑がもらえる。
二枚書いて、一枚は学校にずらりと張りつけ、一枚は家へもって帰る。親たちは、居間や、客間や、または、あたしの家などは玄関へ自慢で張る。
この秋山先生も書もらしてはならない人だ、学校そのものもまた! そして年の暮のことどもも――