Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

Read 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,045 characters · 322 screens

Aozora Bunko

奪られたお弁当箱は、祖母が根負けして買ってくれた朱塗りの三ツ重ねの、小いさい丸いので、女中が持ってきて置いていったばかりのだった。中身には御飯の上に煎鶏卵と海苔をかけて、隠元豆のおかずに、味噌漬がはいっている約束になっていたのだ。お弁当の袋をとるのが待遠しくってならなかったのだった。となりにならんでいる女の子と、副食物の分配っこの相談までしてあったのに――机の上には、新らしい小さな箸箱と茶呑茶碗が出ている――

おまっちゃんは露路の方を睨めて泣きたいのを堪えていた。大紙屋の白壁蔵の壁には大きな亀裂があって、反対の算盤屋の奥蔵は黒壁で、隅の方のこんもりした竹が冷しく吹いている。石榴の花は赤く散りこぼれている。

女中がお弁当を持ってきた時に、

「御飯が炊きたてですから、悪くならないように、風通しのよい場処へお置きなさいまし。」

と念をおしていった。それでおまっちゃんは竹の風の吹く、窓の敷居の上へのせておいたのだった。昨日奪られた子も、一昨日奪られた子も、窓に近いお座だった。

あたしは自分のお弁当をおまっちゃんに持っていってやったが、おまっちゃんは見向きもしないで、窓に石盤をのせて、色石筆であねさまを絵いていた。