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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens
痩形の彼は派手な縞柄の洋服をきて、帽子を深くかぶって、手には細いステッキを持っていた。さし当りどうするというわけにも行かなかったが、ここで幸いにロイドを見つけた以上、半七はその監視を怠ることは出来なかった。かれは三五郎と松吉に眼でしらせて、少しく混雑の群れから離れた。三人は桜のかげにたたずんで、若い異人の挙動をうかがっていた。
「そこが岩亀ですよ」と、三五郎はまた教えた。
ロイドは岩亀の店さきから二、三間距れたところに立ち暮らして、誰かを待ち合わせているらしかった。果たして岩亀の店口から二人づれの男が出てきた。そのあとから引手茶屋の女が付いて来た。それをみると、ロイドは柳の蔭からつかつかと出て行って、立ち塞がるように二人のまえにその痩せた姿をあらわすと、彼等はそこに立ちどまって何か小声で話し合っているらしかったが、やがて二人は茶屋の女に別れて、ロイドと一緒にあるき出した。
「あの一人が勝蔵ですよ」
三五郎に教えられて、半七はうなずいた。かれは三五郎と松吉にささやいて、異人と二人の男とのあとを追ってゆくと、廓内はいろいろ人の出盛る時刻となって、ややもすると其の混雑のなかで相手を見うしないそうになったが、丈のたかい異人を道連れにしているので、勝蔵らはその尾行者の眼から逃がれることが出来なかった。