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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(三)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens
思われた。重吉は蔵のなかへ何か取り出しに行ったのであろうと想像された。
憎い女が突然この世から消えてしまって、男ばかりが生き残ったのは、おかんに取ってはこの上もない好都合であった。かみなりは彼女に守護神ともいうべきであった。しかし彼女はやはり不運を逃がれることは出来なかった。お朝の死についで起ったのは相続人の問題で、重吉がその候補者のうちで最も有力の一人であるらしいので、おかんは又もや気を揉みはじめた。重吉が尾張屋の相続人となってしまえば、おそらく奉公人の自分をこの店の嫁にしないであろう。かりに重吉が承知したとしても、世間の手前、喜左衛門が承知しないであろう。こう思うと、かれは又新しい苦労をしなければならなかった。
そのうちに其の話はだんだん進行するらしい形跡がみえて、二七日の前日におかんが松倉町の三河屋へ使にゆくと、そこでもそんな噂を聞かされたので、彼女はもう落ち着いていられなくなった。寺まいりの当日、主人や重吉が今戸へ行った留守に、おかんはいろいろに思案した。かれはとうとう思案をきめて、重吉の帰りを待った。
重吉らが帰ってくる頃から又もや雷雨になった。