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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(三)

岡本 綺堂

Read 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,612 characters · 405 screens

Aozora Bunko

それでも念のために窓から表をのぞくと、伊勢屋の店は海側で、裏二階の下はすぐに石垣になっていた。品川の春の海はちょうど引き潮で、石垣の下には潮に引き残された瀬戸物の毀れや、粗朶の折れのようなものが乱雑にかさなり合って、うららかな日の下にきらきらと光っていた。

遠目の利く半七は※(「木+靈」、第3水準1-86-29)子に縋ってしばらく見おろしているうちに、なにを見付けたか急に与七を見かえって訊いた。

「お駒の草履は何足あるね」

「二足ある筈です」

「それはみんな揃っているかえ」

「揃っている筈です」

「そうか。いろいろ気の毒だが、今度は裏口へ案内してくれ」

裏梯子を降りて裏口へまわって、半七は石垣の上に立った。かれは足の下をもう一度みおろして、それから石段を降りて行った。なにをするのかと与七は上からのぞいてみると、半七はうず高い塵芥のあいだを踏み分けて、大きいごろた石のかげから重ね草履の片足を拾い出した。かれは湿った鼻緒をつまみながら与七にみせた。

「おい、よく見てくれ。こりゃあお駒のじゃあねえか」

「さあ」と、与七は覗きながら考えていた。

「親分さん」

上から呼ぶ声がするので見あげると、お定も二階の子から覗いていた。