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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,865 characters · 432 screens
「そうでしょうねえ」
お角の話が今更のように思い合わされて、文字春は深い溜息をついた。
「それで御検視はもう済んだんですか」
「いや、御検視は今来たところだ。そんなところにうろついていると面倒だから、おいらはちょいとはずして来て、御検視の引き揚げた頃に又出かけようと思っているんだ」
「それじゃあ、あたしももう少し後に行きましょう。そんな訳じゃあお悔みというのも変だけれど、まんざら知らない顔も出来ませんからね」
「そりゃあそうさ。まして師匠はあすこの家まで幽霊を案内して来たんだもの」
「いやですよ」と、文字春は泣き声を出した。「後生ですから、もうそんな話は止して下さいよ。なんの因果で、あたしはこんな係り合いになったんでしょうねえ」
半あまりも過ぎて、兼吉は再び出ていった。文字春はこわごわながら門口へ出て見ると、近所の人達もみな門に出てなにか頻りにいろいろの噂をしていた。津の国屋のまえにも大勢の人があつまって内を覗いていた。きょうも朝から雲った日で、灰を凍らせたような暗い大空が町の上を低く掩っていた。
「おい、師匠。御近所がちっと騒々しいね」
声をかけられて見返ると、それはここらを縄張りにしている岡っ引の常吉であった。