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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(二)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(二) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,865 characters · 432 screens
役人の検視も一応済んで、五人の死骸は村の高巌寺に葬られた。ここらの葬式は夜であったが、その宵に無数の狐火が寺のうしろの丘の上に乱れて飛んでいるのを見た者があった。
二
「どうも朝夕はめっきり冷たくなりました」
八州廻りの目あかしの中でも古狸の名を取っている常陸屋の長次郎が代官屋敷の門をくぐって、代官の手附の宮坂市五郎に逢った。長次郎はその頃もう六十に近い男で、絵にかいた高僧のように白い眉を長く伸ばしていた。
「やあ、常陸屋か。だんだんと日が詰まって来るな」と、市五郎は玄関に近い小座敷で彼と向い合った。
「なにかとお忙がしいでございましょうね」と、長次郎は会釈して筒提げの煙草入れを取り出した。「早速でございますが、何か新石下の方に御検視があったそうで……。わたくしは親類に不幸がございまして、きのうまで土地を留守にして居りましたもんですから、一向に様子が判りませんのでございますが……」
「検視は八州の方で取り扱ったので、わたしもよくは知らないが、その顛末だけは詳しく知っている。新石下の百姓どもが五人死んで、ふたりは生き返った」
松葉いぶしの一件を市五郎からくわしく説明されて、長次郎は顔をしかめた。