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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
本妻には男と女の子がある。しかもみんないい人であると云う。それではお家騒動が芽をふきそうもない。
そんな事をいろいろ考えながら、半七は半時ほども其処に立ち暮らしたが、浅井の屋敷からは犬の児一匹も出て来なかった。そのうちに雨はますます降りしきるので、半七もさすがに根負けがして、丁度通りかかった空駕籠をよび留めて、ひとまず神田の家へ帰った。
日が暮れると、子分の幸次郎が来た。
「とうとう降り出しました」
「ことしはどうも降り年らしい。きょうも降られて、中途で帰って来た」
「どこへ行きました」
「築地へ廻った」
きょうの一件を聞かされて、幸次郎は熱心に耳を傾けていた。
「親分。その一件なら、わっしも少し聞き込んだことがあります。御承知の通り、あの辺には屋敷が多いので、わっしも大部屋の奴らを相当に知っていますが、この間からいろいろの噂を聞いていますが、噂という奴はどうも取り留めのないもので……。だが、親分。ここに一つ面白いことがあります。こりゃあ聞き捨てにならねえと思うのですが……」
「聞き捨てにならねえ……。どんなことだ」
「あの一件の当日、主人の因幡という人は陸を帰る筈だったそうです。