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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
清吉も姪が可愛さに、若殿さまを二階に忍ばせて、十分に名残を惜しませた上で、二人を心中に出してやったんだろうと思われます。船の一件が露顕すれば、清吉もお信もどうで無い命、殊にお信はしっかり者だけに執念深い。それに魅こまれた若殿さまはお気の毒のようですが、この人は女に惚れられるような美男に生まれ付いただけに、体も弱く、気も弱い質で、年もまだ十七、無事に家督を相続したものの、親や妹には不意に死に別れ、お信はゆくえ知れず、唯ぼんやりとしているところへ、死んだと思ったお信が突然にあらわれて来て、それにいろいろ口説かれたので、ついふらふらと死ぬ気になったんでしょう。今更のことじゃあないが、女に惚れられると恐ろしい。若殿さまがお信という女に惚れられた為に、これほどの大事件が出来して、三千石の家は見ごとに潰れてしまいました」
「お嬢さまの死骸はとうとう揚がらなかったんですか」と、わたしは最後に訊いた。
「いや、そのお春というお嬢さまは……」と、老人は悼ましそうに顔をしかめた。「何処をどう流れて行ったのか知れませんが、房州の沖で見付かりました。これは後に聞いたことですが、房州の漁師が沖へ出て、大きな鮫を生け捕って来て、その腹を裂いてみると、若い女の死骸がころげ出た。