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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
自然に人に感付かれるようになる」
「お前さんは感付きましたかえ」
「少し胸に浮かんだことがある。このあいだ米屋へ行った時に、おれの眼についたのは藤助という奴だ。越後か信州者だろうが、米搗きにしちゃあ垢抜けのした野郎だ。あいつの身許や行状を洗ってみろ」
「あいつが曲者ですか」
「曲者とも決まらないが、なんだか気に喰わねえ野郎だ。あいつは道楽者に違げえねえ。まあ、調べてみろ」
「かしこまりました」
「もう一人、あの米屋の若い者に銀八という奴がいる。あいつも変だから気をつけろ。それから如才もあるめえが、亀吉とでも相談して、新宿あたりの山女衒をあさってみろ。このごろ宿場の玉を売り込みに行った奴があるかも知れねえ」
「成程、わかりました」
庄太は忽々に出て行った。その日はほかによんどころない義理があって、半七は午頃から日本橋辺へ出かけたが、例の一件が気になるので、その帰り道に青山へ足を向けた。なんと云っても此の事件は、六道の辻のあたりが中心であるので、半七はそこらを一巡うろ付いた後に、烏茶屋に腰をかけた。
江戸時代の人は口が悪い。この茶店の女房の色が黒く、まるで烏のようであるというので、烏茶屋という綽名を付けてしまったのである。