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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
半七捕物帳
一
ある年の夏、わたしが房州の旅から帰って、形ばかりの土産物をたずさえて半七老人を訪問すると、若いときから避暑旅行などをしたことの無いという老人は、喜んで海水浴場の話などを聴いた。
そのうちに、わたしが鋸山へ登って、おびただしい蛇に出逢った話をすると、半七は顔をしかめながら笑った。
「わたしの識っている人で、鋸山の羅漢さまへお参りに行ったのもありましたが、蛇の話は聴きませんでした。別にどうするということも無いでしょうが、それでも気味がよくありませんね。蛇と云えば、いつぞやお化け師匠のお話をしたことがあるでしょう。師匠を絞め殺して、その頸に蛇をまき付けて置いた一件です。あれとは又違って、わたくしの方に蛇のお話がありますが、蛇にはもう懲りましたか」
「かまいません。聴かせて下さい」
「では、お話をしますが、例のわたくしの癖で、前置きを少し云わせてください。それでないと、今の人達にはどうも判り兼ねますからね。御承知の通り、小石川に小日向という所があります。小日向はなかなか区域が広く、そのうちにいろいろの小名がありますが、これから申し上げるのは小日向の水道端、明治以後は水道端町一丁目二丁目に分かれましたが、江戸時代には併せて水道端と呼んでいました。