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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
その不便は敵も同様であったが、この場合には弱い者の方に都合がよい。芒の邪魔を利用して、大吉らは必死に抵抗した。
四、五匹の野良犬も駈け寄った。かれらは半七らの味方をするように、大吉らを取り巻いて、吠え付き、飛び付いた。鋤を持つ男は半七を突き放して、一間ほども逃げ延びたかと思うと、芒の根につまずいて倒れた。半七は折り重なって組み伏せた。
大吉は案外に激しく抵抗したが、これもやがて善八の膝の下に倒れた。芒の葉に切られて、敵も味方も、頬や手足に幾ヵ所の擦り疵を負った。二人が早縄をかけて立ち上がる時、犬は半七らを導くように吠えて走るので、芒のあいだを付いてゆくと、そこには芒が倒れて乱れているひと坪ほどの空地が見いだされた。新らしく掘り返された土は柔らかく、そこに何物をか埋めてあるように見られたので、大吉の鍬をとって掘り起こすと、土の下には若い大工の死骸が横たわっていた。
六
「これで捕物は終りました」と、半七老人は云った。「捕物で怪我をしたことは度々ありますが、その時のように芒のお見舞を受けたことはありません。当分は顔や手足がひりひりして、湯に入るにも困りましたよ」