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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
男娼あがりで、男振りも優しく、口前もいいので、お由はいつか大吉と出来合ってしまったんです。うわべは柔らかでも肚のよくない大吉、これが次右衛門親子と共謀して、ひと芝居打つことになったんです」
「その芝居の筋立ては……」
「芝居の筋立ては、関口屋のひとり娘を殺してしまって、従妹同士のお由をその相続人に直そうという策略です。ひとり娘のお袖がコロリで死んでくれれば申し分はないが、お誂え向きにも行かない。さりとて毒殺などをすれば、あとが面倒。そこで考えたのがかむろ蛇です。お袖親子がこのごろ水道端の氷川明神へ参詣に行くのを幸いに、まずかむろ蛇で嚇かして置いて、それからお袖を殺すことにする。殺す方法は毒蛇に咬ませる。かむろ蛇のことは世間でも知っているから、その祟りで蛇に殺されたと云えば疑う者もあるまい。親の次兵衛は迷信者だから、勿論うたがう筋はない。今の人から思えばちっと拵え過ぎた芝居のようですが、なにしろかむろ蛇の信じられていた時代ですから、それを利用してこんな芝居も考えられたんです。
その頃、湯島天神の境内にも芝居小屋がありました。その芝居に出ている力三郎という子役を大吉が借りて来て、明神山にかむろ蛇の姿をあらわすという趣向……。