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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
そこらに鬼火のような焼酎火が燃えている。なにしろ路が狭く出来ているので、その幽霊と摺れ合って通らなければならない。路のまん中にも大きい蝦蟇が這い出していたり、人間の生首がころげていたりして、忌でもそれを跨いで通らなければならない。拵え物と知っていても、あんまり心持のいい物ではありません。
ところが、前にも申す通り、好奇心と云うのか、怖いもの見たさと云うのか、こういうたぐいの観世物はなかなか繁昌したものです。もう一つには、こういう観世物は大抵景品付きです。無事に裏木戸まで通り抜けたものには、景品として浴衣地一反をくれるとか、手拭二本をくれるとか云うことになっているので、慾が手伝ってはいる者も少なくないんです」
「通り抜ければ、ほんとうに浴衣や手拭を呉れるんですか」と、わたしは訊いた。
「そりゃあ呉れるには呉れます」と、老人は笑いながらうなずいた。「いくら江戸時代の観世物だって、遣ると云った以上はやらないわけには行きません。そんな与太を飛ばせば、小屋を打ち毀されます。しかし大抵の者は無事に裏木戸まで通り抜けることが出来ないで、途中から引っ返してしまうようになっているのです。