Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens

Aozora Bunko

夜はともあれ、昼は往来の人影は絶えず、水にも上り下りの船の浮かんでいない時はない。その繁華な土地のまん中に小さく盛り上がっているこの山が、一体どんな秘密をつつんでいるのか。この山にふみ込むと一種の怪異に出逢うなどと、一体誰が云い出したのか。まったくそんな例があるのか。半七は立ちどまったままで暫く考えていると、うしろから不意に声をかける者があった。

「親分さん。どちらへ」

気がついて見返ると、それは此の堤下に髪結床の店を出している甚五郎という男であった。甚五郎はもう四十を二つ三つも越えたらしい、顔に薄あばたのある男で、誰に対しても遠慮なしに冗談をいう愛嬌者として知られていた。その冗談が売り物になって、かれの店はいつも繁昌していた。

「やあ、親方。寒いね」と、半七も挨拶した。

「寒いにも何にも……。わたしはこの冬になって、もう三度も風邪をひきました。この分じゃあ今年は江戸から越後へ出かせぎに行くようになるかも知れませんぜ。おそろしい」

「世のなかは逆になったからな。やがてそうなるかも知れねえ」と、半七も笑った。「いや、恐ろしいといえば、この頃この山が物騒だというじゃあねえか」