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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
と、女は泣き声をふるわせて、相手に食ってかかるように叫んだ。
「まだそんなことを……。近所へきこえても迷惑だ。さあ、帰れ。浪人しても、おれは侍だ。不法の云いがかりをすると、容赦しないぞ」
この時、露路の口から忍ぶようにはいって来る足音がきこえたので、半七はあわてて井戸側のかげに身をかくすと、一人の男があたりを見まわしながら、小左衛門の家の格子をそっとあけた。そのあとから徳次も抜き足をして追って来た。
「おい。野郎が来たぞ」と、彼は半七を見付けてささやいた。
予定の通りに、新次郎が忍んで来たのである。しかも彼がはいって来てから、三人の話し声が俄かに低くなって、外へはちっとも洩れなくなったので、二人は苛々しながら猶も窺っていると、忽ちに女の悲鳴が起った。
「あれ、人殺し」
もう猶予は出来ないので、二人は格子を蹴開いて跳り込むと、小左衛門は早くも行灯を吹き消した。狭い家内の闇試合で、どうにか男ひとりを取り押えたが、ほかはどこにいるのか見当が付かなかった。徳次は大きい声で呼んだ。
「長屋の者は早くあかりを持って来い。御用だぞ」
御用の声を聞いて、長屋の者どもは提灯や蝋燭を照らして来た。