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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 217,272 characters · 434 screens
いや、それも普通の絵馬ならば、なんとか内済にする法があるかも知れねえが、正雪の絵馬じゃあ何分にも事が面倒になる。由井正雪が天下の謀叛人だということは、三つ児でも知っている筈だ。あんな物をそのままにして置くお上の思召しは知らねえが、それに眼をかけて、内証で盗み出して、自分の家に仕舞い込んで置くというのは、上を恐れぬ致し方だと云われても一言もあるめえ。おまえを嚇かすようだが、由井正雪は徳川のお家を亡ぼそうとした謀叛人だ。その謀叛人に心を寄せて、その奉納の絵馬を大事に仕舞って置くなぞとは飛んでもねえ話だ。万一それが露顕したら、公儀に対して不届きな奴だというので、重ければ死罪か遠島、軽くとも追放で家財は没収、何代か続いた丸多の家もお取り潰しになるのは知れたことだ」
それを聞かされて、与兵衛も蒼くなった。まったく万次郎の云う通り、謀叛人の絵馬などを盗み出して、大事に仕舞って置くことが露顕したあかつきには、どんなお咎めを受けるかも知れない。盗むということがすでに悪いのに、それを盗んだ品が更に悪いのであるから、どうでも無事に済む筈がないと、彼はふるえ上がるほどに驚いたのである。