Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

Read 智恵の一太郎 (ちえのいちたろう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 67,333 characters · 134 screens

Aozora Bunko

「さあ、手を出してごらん」

「え、手をどうするの」

「まあ、いいから出してごらん」

一太郎君が、いわれるままに手をさし出すと、高橋さんは何を思ったのか、今作った紙のくだを口にくわえ、一方のはしを一太郎君の手の甲にむけて、ふーっと強く息をふきつけたのです。

「寒い、寒い」

一太郎君は、思わず手をひっこめました。

「どうだ、寒いだろう、……わかったかい」

「え、何が」

「つめたい空気でなくっても、風は寒いということがさ。僕の息は体の中であたたまっているから、この部屋の空気よりは暖いのだよ。その暖い息をふきつけても、君は寒いっていったじゃないか。どういうわけだか、わかったかい」

「だって、それは、息が長いくだの中を通って外に出ると、この部屋の空気よりひえてしまうんでしょう。でなけりゃ、寒いはずがないや」

「ふん、そうかね。それじゃ、もう一つ実験をして見せてやる」

高橋さんは立ち上って、部屋の柱にかけてあった寒暖計を取りはずして来ました。

「十五度だ。今この部屋の空気の温度は十五度なんだよ。ところで君にたずねるが、僕がこの紙のくだで、寒暖計の水銀の玉に息をふきつけたら、水銀は上ると思うか、それとも下ると思うか」