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ちえのいちたろう
智恵の一太郎
江戸川 乱歩
Read 智恵の一太郎 (ちえのいちたろう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 67,333 characters · 134 screens
君、知ってるかい。象におせんべいを投げてやるだろう。そのおせんべいが、象の鼻のとどかない所へおちると、象はどうしておせんべいを取るか知ってるかい。僕、いつか見たんだ。象はね、おせんべいの向こうの壁に、鼻でフーッと息をふきつけるんだよ。そうすると、その息の風が壁にあたって、こちらへかえってくるだろう。象の鼻の息ってすごいよ。だから、おせんべいがこちらの方へ、コロコロところがるのさ。象のやつすました顔でころがって来たおせんべいを、鼻でつまんで、口の中へ入れるんだよ」
「そうかい、さすがは智恵の一太郎だね。僕、知らなかったよ。で、それがどうしたのさ。ここには象なんていないじゃないか」
「だから、象の鼻のかわりになるものを考えてみたのさ。なんでもないんだよ。ホラこれさ」
一太郎君は、そういって、足もとの地面をゆびさしました。でも、良雄君には、まだわからないのです。
「なんにもないじゃないか。石がころがっているばかりじゃないか」
「だから、この石なんだよ。見ててごらん。君はきっと、なーんだ、そんなことかっていうにきまっているよ。ほら、あすこに木ぎれが浮いてるだろう。