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きそがわ
木曾川
北原 白秋
Read 木曾川 (きそがわ) by 北原 白秋 (きたはらはくしゅう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 25,659 characters · 52 screens
日本ラインの奇岩怪石は多く相迫って河中聳立するが恵那峡の岩石美は寧ろ山上にあり千仞の懸崖にある。
「あれが青崖」
眼を遮るは濃青の脈々たる岩壁である。その下の鞍掛岩。その左は展けた下流の空の笠置山。雲だ、雲だ、雲だ。
右には武光岩、鬼岩、蟇岩、帽子岩、ただ見あぐる岩石の突屹相、乱錯相、飛躍相、蟠居相、怪異相、趺坐相相相である。点綴するには赤松がある、黒松がある、矮樹がある、疎林がある。
光る、光る、光る、光る朴の葉裏である。
ぼッぼッぼッぼッ、煙、煙、煙。
「や、あれが月待ヶ丘です」
「今夜の満月はさぞいいだろうな」と私はその丘の空際をふり仰いだ。それにしてもあまりに慌ただしい舟の速力である。
「誰か踊らないか」と一人がビールをあおった。
「あ、あれが村雨の滝です」
峡中の美橋、美恵橋が現れて来た。一名褌橋というのがそれだ。褌の節約と馬糞の拾集とから得た利益を積み立てて架橋したのが大正三年の洪水で流出した。
「褌橋が落ちた。と歌ったものです」で、みんなが笑い出した。今のは鉄橋。
「山峡」同人の指呼はいよいよ急がしくなる。天狗岩です。ほら、枕石だ、後阿弥陀岩だ、砲台岩岩岩岩。