Japanese reading practice

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もくせいのかおり

木犀の香

薄田 泣菫

Read 木犀の香 (もくせいのかおり) by 薄田 泣菫 (すすきだきゅうきん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,383 characters · 3 screens

Aozora Bunko

秋がだんだん闌けてゆくにつれて、紺碧の空は日ましにその深さを増し、大気はいよいよその明澄さを加へてくる。月の光は宵々ごとにその憂愁と冷徹さを深め、虫の音もだんだんとその音律が磨かれてくる。かうした風物の動きを強く深く樹心に感じた木犀が、その老いて若い生命と縹渺たる想とをみづからの高い匂にこめて、十月末の静かな日の午過ぎ、そのしろがね色の、またこがね色の小さな数々の香炉によつて燃焼し、燻蒸しようとするのだ。匂は木犀の枝葉にたゆたひ、匂は木犀の東にたゆたひ、匂は木犀の西にたゆたひ、匂は木犀の南にたゆたひ、匂はまた木犀の北にたゆたひ、はては靡き流れて、そことしもなく漂ふうちに、あたりの大気は薫化せられ、土は浄化せられようといふものだ。

そして草の片葉も。土にまみれた石ころも。やがてまた私の心も……