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くだもののてんごく
果物の天国
中谷 宇吉郎
Read 果物の天国 (くだもののてんごく) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,077 characters · 3 screens
といって、売っていたものである。柿はドイツ語でもカキである。
アメリカにはパーシモンというものがあって、これは辞書では柿となっているが、まことにつまらないもので、大きさも味も、まるで別物である。まず日本の野生の小さな柿と思えば間違いない代物である。この頃加州の日本人が、日本種の柿を栽培しているので、シカゴなどへも本物の柿が来ているが、これはひどく高くて、われわれの口にははいらない。
蜜柑なども、お正月に食べるごく普通のあの蜜柑が、アメリカでは、相当の貴重品である。オレンジとそれに類似のもの、すなわち柑橘類は沢山あるが、日本の蜜柑のようなものはあまり見当らない。
それで蜜柑の罐詰が、相当量アメリカへ輸出されていて、これは非常に喜ばれている。だいたい食後に、アイスクリームをかけて出すのであるが、かなり値段が高いので、半贅沢品である。パーティの時に出すくらいのもので、一般の家庭ではふだんは一寸食べられない。
こういうふうに考えてみると、日本はまことに果物の天国である。地味もよいのであろうが、一番の原因は、秋が永いという点にあるのではないかと思われる。加州のように、年中合服一着ですむところでも、シカゴのように、夏からすぐ冬になるところでも、ともに日本のような高級な果物は出来そうに思われない。