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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Read 枡落し (ますおとし) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,765 characters · 67 screens
「ありがと」とおうめが云った、「みんな芳っさんのおかげよ、本当にありがとう」
おみきもちょっと頭をさげたが、口ではなにも云わなかった。憎い、悪い男だったけれど、亭主は亭主、あの人が島流しになって、自分たちの生活は安泰になるだろうけれど、これからの一生、鳥もかよわぬといわれる八丈ヶ島で、囚人ぐらしをしなければならないあの人の気持はどんなだろう。そう思うと、おうめのように、すなおに礼を云う気持にはなれなかったのだ。
「それで」とおみきはきいた、「その幸助っていう男はどうしたの」
「弱い野郎でね、二つ三つ拳固をくらわしてから、松島町の番所へ突き出してやりました」と芳造は云った、「――匕首で威したぐらいのこったから、まあ五六十日で出てくるでしょうがね、もう二度とこのうちに迷惑をかけには来ねえと思います」
「でも危なかったわ」とおうめは芳造の手をいたいたしげに見た、「――匕首だなんて、もしけがでもしたらどうするのよ、これからは決してそんなまねはしないでね」
「相手によるさ、――と云いてえところだが、いいよ、わかったよ、これからは決して乱暴なまねはしねえよ」
「きっとよ」