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かきいろのかみふうせん
柿色の紙風船
海野 十三
Read 柿色の紙風船 (かきいろのかみふうせん) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,032 characters · 28 screens
黙っているお蔭で、遂に私は素晴らしいことを発見した。それはあのラジウムを、安全に獄外へ搬びだす工夫だった。まず大丈夫うまく行くと思われる一つの思い付きだった。
その日、昼食が済んで、囚人たちは一旦各自の監房へ入れられ、暫くの休息を与えられた。やがて鐘の音と共に、またゾロゾロと列を組んで、作業場に入っていった。そのとき私は、あのラジウムを裸のままで持ち出した。それは柿色の制服の、腰のところにある縫い目に入れて置いた。
作業場へ入ると、私は一同に準備を命じた。私は組長だったから、作業の初めにあたって、一同の面倒を見てやるため、あっちへいったり、こっちへ来たりすることが許されていた。
「オイ、材料を見せろ」
と私は痩せギスの青年に云った。
「へえ、これだけ出来ています」
私はその紙風船の花びらの束を解いて、パラパラと引繰りかえしていたが、
「おい、一枚足りないぞ」
「え?」
「ナニ、いいよいいよ」と私は云いながら、隅ッこに駄目な花びらが乱雑にまるめてあるところへ寄った。そして中から、一枚の柿色の花びらを取った。「こいつを入れとこう」
「それは駄目です」
柿色の花びらというのは、実は不合格にすべきものだった。