Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
くりのはなのさくころ
栗の花の咲くころ
佐左木 俊郎
Read 栗の花の咲くころ (くりのはなのさくころ) by 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,440 characters · 14 screens
」
「何を言うんだね? お父さんは! 狂人のようなことを言ったりして……」
「なんでもいいから早く出して来う。俺家は、代々、駆落者なんか出したことのねえ家だ。犬共め!」
「それはそうかも知んねえが、代々、こんなに零落れたこともあんめえから。」
「出して来ねえのか? そんなら自分で出して来るからいいで。貴様まで精神が腐りやがった。」
嘉三郎は叫ぶように言って座敷へ這入って行った。
「お父さんてば!」
松代は泣きそうにして嘉三郎の手に縋った。併し嘉三郎は、ぐんぐんと箪笥の前へ寄って行って曳き出しを開けた。同時に、どこから飛び出して来たのか、次女の嘉津子も父親の腕に縋った。
「お父さん! お父さんたら! お父さん!」
併し、嘉三郎は、左手に刀を握りながら、右手でぐっと、松代と嘉津子とを払い除けた。
「男のすることにあ、例えどんなことにもしろ、女どもが口出しをするもんじゃねえ。」
嘉三郎は二人を睨みつけるようにして言った。その眼はぎらぎらと涙で濡れていた。頬にまで涙は流れて来ていた。
「嘉津! お前もよく覚えて置けよ。」
父親の嘉三郎はそう言って出て行った。松代は、遣る瀬なさそうに、嘉津子の頭を自分の胸へぐっと抱えた。