Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

つちのなかからのはなし

桜の森の満開の下

坂口 安吾

Read 桜の森の満開の下 (つちのなかからのはなし) by Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 76,558 characters · 153 screens

Aozora Bunko

天皇から皇后になることはできないのかな、と、女帝の空想はたのしかった。道鏡が天皇になったら、うんと駄々をこねて、こまらしてやりたい。うんとすねたり、うんと甘えたり、手のつけられないお天気屋になってやりたい。そして道鏡の勘の鈍い、取り澄した、困った顔を考えて、ふきだしてしまうのだ。

*

和気清麻呂は戻ってきた。

彼のもたらした神教は意外な人間の語気にあふれ、奇妙な結語で結ばれていた。無道の者は早くとりのぞくべし、というのだ。

道鏡は激怒した。なぜなら、彼は、ただ神教の真否をもとめただけだった。天皇になりたいなどとは言わない筈だ。むしろ、心の片隅ですら、それを望んだ覚えがなかった。

清麻呂の復奏は、ただ道鏡を刺殺する刃物の如く、彼のみに向け、冷やかに、又、高く、憎しみと怒りと正義をこめて、述べられていた。

その不思議さに、いち早く気附いた人は女帝であった。道鏡の立場は何物であるか。彼はただ、贋神教に告げられた一人の作中人物にすぎない。咎めらるべき第一のものは、贋神教であらねばならぬ。神教はそれに就てはふれてはおらぬ。清麻呂の語気も態度も、阿曾麻呂に向けた批難のきざしが微塵もなかった。