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うめちらほら

梅ちらほら

吉川 英治

Read 梅ちらほら (うめちらほら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,712 characters · 6 screens

Aozora Bunko

梅と話す人

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どこでもいい。それこそ裏町のごみごみした露路越しでも、アパートの窓の干物のそばでも、村でも、野でも、或は、ビルデングの歩廊の壺に挿してあるのでも。

春さき、梅の花を、チラホラ見かける頃ほど、平和と、日本の土の香を、感じるときはない。

私は、梅が好きで、いつか「梅」の随筆を、まとめてみたいと思っている。梅に関する折々の感興や話題を古今に集めたら、たちどころに一冊にはなる。

私のいま住んでいる吉野村も、梅の頃には、全村、梅の花である。いつかリーダーズ・ダイジェストに、終戦の時、村の人が、梅を伐った話を書いたら、すぐ朝日の投書欄へ、村の出身者の抗議文が載った。梅村の住民には、そんな非愛郷心の持ち主はないというのである。それほど、吉野村は、梅の村だ。村の梅窓に机をおく私としても、一部の随筆ぐらいは残しておかないとすまない。

そこで、ちらほら、書いてみる。

梅と話す人

梅を画かない日本画家はない。画題として、梅ほど画家に好かれる花はないだろう。古い水墨家では、足利期の一之の梅が私は好きだ。中華には、墨梅の名手が少くないが、日本人の梅はやはり日本の梅である。