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やりがたけだいさんかいとざん

槍ヶ岳第三回登山

小島 烏水

Read 槍ヶ岳第三回登山 (やりがたけだいさんかいとざん) by 小島 烏水 (こじまうすい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,115 characters · 11 screens

Aozora Bunko

路の方を振り向くと、峡間の底から、大霧は雪を包んで乱舞を始めている、それは噴火口の底から、硫烟が幾筋も縺れ合い、こんぐらかって、騰上するようである。

岩石の大崩れがあって、左の方に石を囲んだ坊主小舎がある、小舎の中は未だ雪が多くて、泊まることは出来そうもない、鍋が一枚蔵してあった、冠君は既に槍ヶ岳登りを終られて、雪を辷り落ちるようにして、下りて来られた、二言三言話を交えて、さっさと下りて行かれる。

ここから見ると、赤沢岳の鞍状の凹みの間から、常念岳が出たが、頂上は雲で見えなかった、昨夜の野営で一日分の食糧が減ったので、人夫の一人を解放して、下山させた。

石の崩れ路を登り始める、人の下りたときの、草鞋や杖で穿り返された雪は、橇でも※(「てへん+曳」、第4水準2-13-5)いたように生々しい傷がついている、その雪も大石に挟まれたところは、石の熱のためか、溶けて境界線が一寸した溝になっている、先刻見えなかった常念岳が、イガ栗頭をぬいと出す、高野君と高頭君は、ハンド・レヴェルを持ち出して、ためつすかしつ眺めながら、ここより高いとか、低いとか、頻に言い合っている。