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どくガスはつめいかん

毒瓦斯発明官

海野 十三

Read 毒瓦斯発明官 (どくガスはつめいかん) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N1. Tap a word for the meaning.

N1 · advanced · modern kanji and kana · 9,511 characters · 20 screens

Aozora Bunko

「あれは何ですか、あの煙突は」

「試作の毒瓦斯が空高く飛び去るためだ」

「毒瓦斯は元来空気より重きをよしとするのでありまするぞ。煙突から飛び立つような軽い毒瓦斯てぇのはありません」

「いや、その重い毒瓦斯の逃げ路も作っておいた。向うに見える太い鉄管は、海面すれすれまで下りている。重い毒瓦斯は、あの方へ排気するんだ。風下はベンガル湾だ。海亀とインド鰐とが、ちかごろ身体の調子がへんだわいといいだすかもしれんが……」

醤が毒瓦斯発明院に対して肩の入れ方は、非常なものだった。燻精は、彼の信頼に十分報いることが出来ようと自信たっぷりだった。

発明院長に燻精が就任して、百三十五名の発明官が、その下に仕事を始めることになった。まず設備を作るのに、三ヶ月かかった。それから燻精の講義が三ヶ月つづいた。

燻精の講義は全くすばらしかった。ときどき傍聴に来る醤買石は、その都度、頤の先をつねって恐悦した。

「ふふふ、洋酒百四十函が、こんなにすばらしい効目があろうとは、すこし気の毒だったなあ」

燻精の指導ぶりは、目のさめるようであった。

原動機は廻転し、ベルトはふるえ、軸は油をなめまわし、攪拌機はかきまわし、加熱炉は赤く焔え、湯気は白く噴き出し、えらい騒ぎが毎日のように続いた。