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みずあかをぎょうしす
水垢を凝視す
佐藤 垢石
Read 水垢を凝視す (みずあかをぎょうしす) by 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,841 characters · 10 screens
五
川へ膝まで入って、足の甲が見える位の濁りならば、友釣に掛るものである。濁った時の方が却って釣れる場合がある。鮎は人の姿を恐れる。だから汀に近いところに、新しいおいしそうな垢があっても日中は近よらないものである。ところが、川が薄濁りになって来て、身を隠すに適当であるならば、深いところにいた鮎は争って汀近くへ集って来て盛に遙か遠くから指をくわえて眺めていた垢石になめつくのである。川が濁ったならば、ヘチを釣れとはこのことをいうのである。そこで、濁りが消え水が去った後、岡へ上った石を見ると鮎の歯跡が縦横に印せられてある。これを『岡なめ』という。
『岡なめ』は居付鮎が残したもののみを呼ぶのではない。溯上期の鮎も『岡なめ』を残す。それは、四月末から五月、六月の若鮎の溯上最も盛んな頃は、山から雪が解けて来るか、打ち続く霖雨のため、川の水は極めて多い季節である。その頃、岸に近いところの石をなめた跡は、渇水期になると岡へ上ってしまう。だから、暑中になると岡石に鮎のなめ跡を発見するものだ。
五
出水がなくとも、石に新しい垢がつく場合がある。それは、石についた水垢は出水のないこと数十日に及ぶと随分厚くなる。