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りゅうこうさっかのし
流行作家の死
野村 胡堂
Read 流行作家の死 (りゅうこうさっかのし) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,876 characters · 28 screens
寝室は母屋の二階ですが、この新しい贅沢な離屋が、余程気に入ったものと見えて、原稿の忙しい時などは、長椅子の上で一と晩過すことも珍らしくはありません。
小栗のこんな習慣は、江藤老人からも聴きましたが、一面識のある足の勇も、朧ろ気乍ら知らないではありません。
内廊下が尽きると離屋の入口で、樫の大戸が、どんな事をして打ち破ったものか、滅茶滅茶に叩きこわされ、中には、急いでやって来たらしい和服着流し姿の中年の医者が、係官の来るのを待つともなく、少し職業的な冷たさを装って、小栗桂三郎の死体を護って居ります。
「旦那様が御存じの新聞の方で御座います」
江藤老人に紹介されて、二人は目礼を交しました。佐伯という内科の博士で、町医者乍ら、界隈で鳴らした人です。
「僕は新報の早坂という者です。小栗さんが自殺をしたという誰が掛けたかわからない電話を受けて驚いて飛んで来たんですが、本当に自殺したのでしょうか」
「さア、判然したことは、解剖しなければわかりませんが、自殺とでも思わなければ説明のしようがありません」
「と仰しゃると」
「いずれ、もう警察医の方が来るでしょうから、立会で診た上発表しますが、――密閉された部屋で人が死んで居て、それが、炭酸瓦斯中毒か、青酸中毒の徴候を現わして居るとしたら――自殺と言っても差支はあるまいと思います。