Japanese reading practice

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しんやのきゃく

深夜の客

大倉 燁子

Read 深夜の客 (しんやのきゃく) by 大倉 燁子 (おおくらてるこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,926 characters · 28 screens

Aozora Bunko

優しく言うと、美和子はもう我慢がしきれなくなったというように、突然声をあげて泣き出した。

「どうなさいました? お父様の御病気でもお悪いのですか?」

「いいえ。父が――、あの父が――」

「お父様が?」

「あの――、亡くなりましたの」

「えッ? いつ?」

長距離電話で声で聞いたのは、まだ四五時間前の事だ。洋子もこの急変に驚いてしまった。

「それが分らないんですの。私――、ちっとも知らずに――、お書斎へお茶をいれて持って行ったんですの」と云いかけて、美和子は怖しそうに身を震わし、

「父は机の前に俯伏せになって――、死んで居りました。四辺は一面の血――」

「咯血なすったの?」

「いいえ。たぶん泥棒に――、心臓に短刀が刺っていました。――私は夢中でその短刀を抜き取りましたの、すると急に血が吹き出して、私の手も、腕も、袖も、血だらけになってしまい――」

洋子は終りまで聞いていられなかった。美和子に案内させ、主人の書斎へ馳けつけた。

室内はすっかり荒され、散乱した書類の中に、有松は朱に染って倒れていた。その右手にはピストルがかたく握られてあったが、彼は引金をひく前に、心臓を刺れたものらしかった。