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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Read 渡良瀬川 (わたらせがわ) by 大鹿 卓 (おおしかたく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 280,528 characters · 557 screens
日本、毎日、読売の各新聞が、紙面の片隅を割いて広告してくれた。その前日になると「古河が銅山の鉱夫を多数会場へ送りこんで演説会をぶち壊すそうだ」そんな風説を伝えるものがあった。山田友次郎が心配して、被害地の青年有志五十余名をにわかに呼び集めて、対抗する手筈をきめたりした。
当日、開会前にまず繰りこんできたのは、栗原の学校の同窓生や上級生で、副島八十八、横山慶三など四五十名ばかりが、演壇のま下に陣取った。まもなく、古河から派遣されてきた鉱夫らしい風貌の者や、やはり古河側の壮士風の男が三々伍々と肩を張って入場し、いつのまにか会場のまんなかを固めた。するとまた正造に味方する一木斎太郎が門下の壮士五六十人を引きつれてきて、それとなくその囲りを取りかこみ、被害地の青年たちはまたさらにその外廓の四隅にがん張った。無論その間に一般の聴衆も追々とつめかけて来て、階上階下思い思いの席を埋めた。警戒の警官が二人三人ずつかたまって帽子の鍔を光らせ、佩剣を鳴らすのも物ものしかった。こうして定刻の一時間前に、弁士控室でも「七百人は入ったね」などと明るい言某が交された。各新聞社の記者が控室に来ては名刺を通じるのを見ると、増田義一、円城寺清、堺枯川等の顔ぶれがあった。