Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みなとについたくろんぼ
港に着いた黒んぼ
小川 未明
Read 港に着いた黒んぼ (みなとについたくろんぼ) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 6,903 characters · 14 screens
一時間はたち、二時間はたっても、ついに姉は帰ってきませんでした。いつしか、日はまったく暮れてしまって、砂地の上は、しっとりと湿り気を含み、夜の空の色は、藍を流したようにこくなって、星の光がきらきらと瞬きました。港の方は、ほんのりとして、人なつかしい明るみを空の色にたたえていたけれど、盲目の弟には、それを望むこともできませんでした。
ただ、おりおり、生温かな風が沖の方から、闇のうちを旅してくるたびに、姉の帰るのを待っている弟の顔に当たりました。弟は、もはやたえられなくなって、泣いていました。そして、姉は、どこへいったろう。もうこれぎり帰ってこなかったらどうしようと心細くなって、涙が流れて止まらなかったのであります。
いつも姉は、自分の吹く笛の音につれて、踊ったと思うと、弟は、もし自分の吹いた笛の音を聞きつけたら、きっと姉は、自分を思い出して帰ってきてくれるにちがいないと思いました。
弟は、熱心に笛を吹き鳴らしました。かつて、こんなに心を入れて、笛を吹いたことはなかったのであります。姉は、この笛の音をどこかで聞きつけるであろう。聞きつけたら、きっと自分を思い出して帰ってきてくれるにちがいない、と、弟は思いました。