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ゆしまのけいだい
湯島の境内
泉 鏡花
Read 湯島の境内 (ゆしまのけいだい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,674 characters · 18 screens
(と茫然とす。)
早瀬 己は死ぬにも死なれない。(身を悶ゆ。)
お蔦 (はっと泣いて、早瀬に縋る。)
※(歌記号、1-3-28)一日逢わねば、千日の思いにわたしゃ煩うて、針や薬のしるしさえ、泣の涙に紙濡らし、枕を結ぶ夢さめて、いとど思いのますかがみ。
この間に、早瀬、ベンチを立つ、お蔦縋るようにあとにつき、双方涙の目に月を仰ぎながら徐にベンチを一周す。お蔦さきに腰を落し、立てる早瀬の袂を控う。
お蔦 あきらめられない、もう一度、泣いてお膝に縋っても、是非もしようもないのでしょうか。
早瀬 実は柏家の奥座敷で、胸に匕首を刺されるような、御意見を被った。小芳さんも、蒼くなって涙を流して、とりなしてくんなすったが、たとい泣いても縋っても、こがれ死をしても構わん、おれの命令だ、とおっしゃってな、二の句は続かん、小芳さんも、俺も畳へ倒れたよ。
お蔦 (やや気色ばむ)まあ、死んでも構わないと、あの、ええ、死ぬまいとお思いなすって、……小芳さんの生命を懸けた、わけしりでいて、水臭い、芸者の真を御存じない! 私死にます、柳橋の蔦吉は男に焦れて死んで見せるわ。
早瀬 これ、飛んでもない、お前は、血相変えて、勿体ない、意地で先生に楯を突く気か。