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たきぐち
滝口
山本 周五郎
Read 滝口 (たきぐち) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 49,815 characters · 99 screens
「ここでも嫁菜というのはあるよ」
「だがそれは、春の双葉のころだけです、秋になって紫色の花が咲くころには、野菊と呼ばれるようになるのを知っていますか」
「そいつは知らなかった」と云って安宅は相手の顔を見た、「本当だろうな」
「おりうもそうなりかかっているんです、ちょっと待って下さい」芳村はいまこそ言葉を選ばなければならないというように、手酌で湯呑に酒を注ぎ、一とくち啜ってから、両手で持った湯呑を膝におろしながら云った、「いい寄ってくる男を手だまにとっていたおりうの中に、変化が起こりだしたんです、おりうも今年で二十四になりますからね、あたりまえなら子供の二人や三人はあってもいいとしごろです」
嫁菜が野菊になるようにか、と安宅は思った。おまえさんもまた、昔のおまえさんのままでいたわけじゃあないだろうし、ものごとをそう譬えに当て嵌めないほうがいいな、と思ったが、安宅は口にだしてはなにも云わなかった。
「失礼になるかもしれないが、袖ヶ崎へゆくのは益村さんでなくってもよかったと思う。おりうにとっては、好ましい相手なら誰でもよかったと思うんです」
「これは手きびしい」