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むだい
無題
宮本 百合子
Read 無題 (むだい) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,172 characters · 11 screens
であると云う事を思わずには居られない。
自らの心を掻き毟る苦悶は、彼等の心にも在る。私共が振り捨てようとする過去の重荷は彼等の背中にも、重くどっしりと負わされて居るのではあるまいか。
お互は互に、我々の生活が如何那に不純であるかを知って居る。よく知って居る。
そして、其の醜い、其の固陋な障壁を破ろうとして、何時から血の汗を掻きながら戈を振って来ただろう。
昨日も、今日も、明日も、明後日も。彼等は戈を振うだろう。けれども、よく瞳を定めて凝と御覧なさい。戈を振いながら、彼等の右手は、恐ろしい執念を以て、壊れ落ちる障壁の破片を、しっかりと、命に掛けて掴んで居る。
掴むと知らずに掴んで居る。一つ落ちれば一つと、二つ落ちれば二つと、終には、振う戈の手も止めなければならない程数多くの、破片を抱え込んで仕舞うのである。
十人は十人、人間の真個な幸福を希望して居る。
万人は万人円らかな愛と、浄化された本然とを求めて居る。
けれども、其なら絶間ない努力と、絶間ない祈りとの熾な焔に、無残にも其を打消す汚れを浴せ掛けるのは誰だろう? 其も亦同じ祈る彼等、努力する私共である。