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ぼたんどうろう ぼたんとうき
牡丹灯籠 牡丹灯記
田中 貢太郎
Read 牡丹灯籠 牡丹灯記 (ぼたんどうろう ぼたんとうき) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,676 characters · 22 screens
と、女は揮り返って笑顔を見せた。彼は女と己との隔てが無くなったように思った。
「燈籠を見にいらしたのですか」
「はい、これを伴れて見物に参りましたが、他に知った方はないし、ちっとも面白くないから帰るところでございます」
女は無邪気なおっとりとした声で云った。
「私は宵からこうしてぶらぶらしているのですが、なんだか燈籠を見る気がしないのです、どうです、私の家は他に家内がいませんから、遠慮する者がありませんが、すこし休んでいらしては」
「そう、では、失礼ですが、ちょっと休まして戴きましょうか、くたびれて困ってるところでございますから」
と、云って燈籠を持った少女の方を見返って、
「金蓮、こちら様でちょっと休まして戴きますから、お前もお出で」
少女は引返して来た。
「直ぐ、その家ですよ」
喬生は己の家のほうへ指をさした。少女は燈籠を持って前に立って往った。二人はその後から並んで歩いた。
「ここですよ」
三人は喬生の家の門口に来ていた。喬生は扉を開けて二人の女を内へ入れた。
「あなたのお住居は、どちらですか」
喬生は女の素性が知りたかった。女は美しい顔に微かに疲労の色を見せていた。