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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Read 狂い凧 (くるいだこ) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 111,430 characters · 226 screens
とにかくあの頃は、爺さん婆さんの年齢の幅が広かった。順々に年老いて婆さんになるのではなく、気分的に服装的に一挙にがくんと婆さんになったものだ。
その婆さんが、気が強過ぎたのが、いけなかった。あるいは度々そんなことがあって、婆さんも腹に据えかねていたのかも知れない。
城介たちも運が悪かったということも言える。
昼休みに中学校の塀を越えて、城介は級友たち三人と、あたりを見廻しながら、そっと当り屋に入った。当り屋の油障子には、的に当った矢の絵が、煙にすすけている。奥には大きな釜が据えられ、その下で薪がぼんぼん焚かれているので、いつも湯がぐらぐらと煮立っている。外から入ると、眼鏡がたちまち曇るほどだ。城介らは手をすり合わせながら卓につき、
「素うどん」
「素うどん」
と注文した。うどんが運ばれると、細ネギをごっそりかけ、一息につるつるとすすり、汁まで余さず飲んでしまう。うどんは噛むものでなく、咽喉で味わうものだというのが、中学生のダンディズムであった。そんな愚かなダンディズムは、どの時代でもどの場所でも、時々見かけられる。
しかし城介たちが当り屋を訪れたのは、単に強がりやダンディズムのせいではなかった。