Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Read 狂い凧 (くるいだこ) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 111,430 characters · 226 screens
「頭を刈ったら、やけに寒さがしみ渡るよ」
そしてお酒と関東煮を注文した。
「おやじやおふくろの前じゃ、窮屈で酒もうまくねえよ。やはりこんなとこでないとねえ」
城介が頭髪を刈ったのは、昨日の昼である。彼の家の前庭で、栄介が手ずからバリカンを使った。矢木家は裕福でないので、床屋には通えない。子供の時から、お互いに刈り合うのである。床屋だと金がかかるが、お互いだとタダだ。
中学校を卒業して以来、彼はバリカンを持ったことが一度もない。城介はしきりに痛がった。
「痛え。痛え」
城介はさかんに痛がって、大げさな悲鳴を上げた。実際彼の腕は鈍っていたが、大げさな悲鳴は幼ない弟や妹へのサービスのためでもある。悲鳴を上げる度に、弟や妹は喜んで、笑いさざめいた。弟妹は城介を見るのが初めてで、
「東京の兄さん」
「東京の兄さん」
と、城介が帰った日から、まつわりついてばかりいた。
「ああ、痛かった」
刈り終ると、城介は妹に鏡を持って来させた。
「兄貴。ひでえ刈り方をしたな。まるで段々畠じゃないか」
「すぐ伸びるよ。伸びたら、段々も消えてしまう」
丁度その時、幸太郎の店の者が使者として来た。