Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
Read 狂い凧 (くるいだこ) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 111,430 characters · 226 screens
あれは六月何日頃か」
何か話したいことがたくさんある。そんな気がするのに、実際には何もなかった。二人で六本あけて、彼は少々酩酊して来た。城介はほとんど顔色は変っていなかった。しかし城介が酔っていることは、彼にも判っていた。城介は奉公をしている関係で、酔いを殺して飲む術に長けていたからだ。彼は言った。
「もうそろそろ出かけた方がいいんじゃないか」
城介は素直に盃を伏せ、二人は店を出た。暗い道を宿舎に歩く途中、うらぶれたような飲み屋があって、入口に赤い提燈がぶら下っていた。城介は足を停めて、腕時計をのぞいた。
「まだ一時間ぐらいある。もう一、二本飲んで行こうや」
二十四、五の白粉をべっとりつけた酌婦が、卓によりかかるようにして、同じ文句のどどいつを、何度も繰り返してうたっていた。
※(歌記号、1-3-28)朝顔の花はばかだよ根のない垣に
命がけしてからみつく
酒はさっきの店よりも、水っぽかった。あるいは二階で売春させて、酒やつまみものは二の次という店なのかも知れない。そう思いながら、彼は盃を傾けていた。突然城介が話を変えた。
「ねえ。兄貴。おれには子供がいるんだよ」