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きょうかしあかちょこべえ
狂歌師赤猪口兵衛
夢野 久作
Read 狂歌師赤猪口兵衛 (きょうかしあかちょこべえ) by 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,418 characters · 79 screens
もちろん毒殺とあれば、何か知らん蔵元屋の内輪の紛糾から起った話に間違いないが、その肝腎の蔵元屋の内輪の様子がちっともわからん。指一本指されんと来とる」
「成る程なあ。無理もないわい」
「何を言うにもあの蔵元屋と言うのは、黒田五十五万石の御用金を扱うておる信用第一の店じゃけに、よほど秘密を口禁っとると見えて、イクラ上手に探りを入れても丁稚、飯炊女に到るまで、眼の球を白うするばっかりで、内輪の事と言うたら一口も喋舌り腐らん」
「それはその筈じゃ。喋舌らせようとする方が無理じゃ」
「そこで今度は方角を変えて、近所隣家や出入りの者の噂から探りを入れてみると、あの斬られた娘のお熊と言うのは、実を言うと先妻の子で、今の母親とは継しい間柄じゃげな。ところでその今の母親と言うのは前身は芸妓上りと言う事で、まだ色も香も相当残っとる年増盛りじゃが、そのような女にも似合わず、生さぬ仲のお熊を可愛がる事と言うものは実の母親も及ばぬくらいで、トテモ世間並を外れとる。お熊が五歳か六歳の頃から、奥座敷で二人ぎりの遊び相手になり始めたなら、日の暮れるのも忘れるくらい。何から何まで人手にかけずに育て上げて、ようよう妙齢になって来ると、裁縫だけは別として、茶の湯、生花、双六、歌留多、琴、三味線、手踊りの類を自分の手一つで仕込んだ上に、姿が悪うなる