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いのししのあじ
猪の味
北大路 魯山人
Read 猪の味 (いのししのあじ) by 北大路 魯山人 (きたおおじろさんじん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,083 characters · 8 screens
犢と親牛の肉は、同じ牛の肉でも全く別な味である。言わば品質が違うのである。
猪の肉も同様で、親猪と仔猪とは共に味も質も違うけれど、食って美味い点では、仔猪はあなどりがたい美味さを持っている。脂肪層はない、肉はやわらかく、「猪は当歳」という言葉は、確固とした意味を持っている。
親猪は脂が多く、肉も粗にしてかたい。仔猪は肉がやわらかく、脂も豚肉の三枚に似て小味である。もちろん、この野生動物は脂の乗る冬が美味い。また大雪の積もる雪国に産するものがよい。伊豆天城あたりでも大分獲れるが、脂が少なくて味も悪い。仔猪は一般に分厚な脂肉は少ないが、仔猪で比較的脂の乗ったものが最も理想的である。大きさで言えば、十五貫目ぐらいの奴がよろしい。
猪の肉を煮て食うには三州味噌がよい。脂っこいものであるから、味噌を入れると口あたりがよいのである。渋味が少しあるから酒を入れる。「猪大根」ということが昔から言われているが、その通り、大根は肉の味に非常によく合う。その点は豚も同じで、大根そのものもなかなか美味く食える。私の子ども時代には、ねぎや何かゴチャゴチャ入れて煮ていたが、醤油のほかに、やはり、味噌を用いていた。