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ごくちゅうつうしん
獄中通信
戸坂 潤
Read 獄中通信 (ごくちゅうつうしん) by 戸坂 潤 (とさかじゅん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,798 characters · 8 screens
(抹消)――嵐子の学校の様子色々知らせて欲しい。明星の卒業生は大体何人どこへ這入ったか。及女大の方はどんな模様か。工場で現場にまわったそうだがどういう仕事か、等。――おばあちゃんの神経痛は良くなったか知ら。もしハリバが買えるなら皆で呑むと好い。存外よい薬だ。――海の手紙、三月に這入ってからのは大変しっかりして来た。勉強する気持ちになって来たらしい。ほめてやって呉れ。
戸坂嵐子殿(五月六日(日)午後三時)(長野)
その後変ったことはないか。お父さんは一日の夜行で発ち翌早朝長野市へ着いた。課長、部長等三名が送って呉れて当地に疎開したわけ。久し振りに東京の街の有様を見、荷物にゴッタ返した闇い車内、スッカリ変った服飾など見てウタタ感慨が深かったが、夜があけると世界は一変して、妙なる枝振りの林檎、桃、水蜜、杏、牡丹桜八重桜(欝金もあり)、散り残りの山桜、木蓮、海棠さては菜の花、桐の若葉、紅葉など、春をこの一瞬に集めている。お父さんはスッカリうれしく、久し振りの運動傍々殆ど特権的な(上野では先に乗り込む)楽なたのしい旅行をした。ここは寒いのと旅行や小包の一般的制限のため面会や将来のさし入れとの他に不利な点があるが、空襲に対する安全率と東京より栄養の可なりよいのと地方であるためにノンビリと山など運動場から眺めて暮すこと