Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
りそうのおんな
理想の女
豊島 与志雄
Read 理想の女 (りそうのおんな) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 38,162 characters · 77 screens
私は癪に障った。それで、また例の通りだとは思いながらも、其処にどたりと枕を投り出して、わざと大きな音がするように寝転んでやった。
「赤ん坊が眼を覚すじゃありませんか。」と秀子は云った。「眼が覚めたら寝かして下さいますか。」
「ではなぜ枕を取ってくれないんだい。」と私は答えた。
「それ位御自分でなさるが当り前よ、私ばかりを使わなくったって……。」
「じゃあお前は、いつも使われてる気で僕の用をしてるのか。心からこうしてあげようという気はないのか。」
「では御自分はどうなの。子供で手がふさがってるからという思いやりは、少しもないんですか。」
そういう水掛論が喧嘩の初まりだった。然しそれは具体的な事実を離れて、お互の態度に及ぶ抽象的な問題になったために、どちらも云いつのるだけではてしがなかった。そして、口論の最中に俄に沈黙が落ちて来た。苛ら立った憤りが、じりじりと胸の奥に喰い込んでいった。……とは云え、いつもはそれきりで済むのであったが、不幸にも、丁度その時速達郵便が玄関に投げ込まれた。「速達!」という配達夫の声に、「はい。」と秀子は答えたが、立っては行かなかった。